[夫婦連載17回]専業主婦の難しい人付き合い

専業主婦にも”付き合い”の苦労はつきもの
周りからは「時間があっていいわね」「会社のわずらわしい人間関係がなくて楽ね」と言われがちな専業主婦。
”人間関係”という言葉が出てくると反論したくなるのでは?赤ちゃんの首がすわるのは4ヶ月くらいです。その頃になると公園にひなたぼっこに出かけたり、遠くのスーパーにお買い物に連れて行けたりと、ママの行動範囲が広くなります。そして1歳、2歳…と大きくなる過程で避けて通れないのがママ友社会です。
子供も遊び相手が欲しい、ママも話し相手が欲しい。ママ友ができることで社会との接点ができます。しかし、大人の社会には表と裏がある。ママ友たちとのお付き合いが順風満帆と思うなかれ。
昔とはトラブルの”質”が変化
私はネットが普及していない90年代にアナログでママさんサークルを結成し、全国組織に広げていました。2000人近いサークルです。私自身ママ友がいなくては子育て期間が寂しくて、不安でたまらなかったのです。
その半面、いじめや嫌がらせ、仲間はずれもあることも理解しました。私が作ったサークルはマーケティングビジネスをしていたので、仕事と割り切って関わるママたちが多く、陰湿なものはありませんでした。
現代ではSNSやLINEによるトラブル増加は言うまでもありません。TBSドラマ「砂の塔〜知りすぎた隣人」はベタなママ友いじめを演出していますので、ママ友トラブルが想像できないかたには参考になります。標的ママ、ボスママ、子分ママ(複数)、観客ママ(複数)が織りなすママ友社会。子供が巻き込まれてしまうこともあります。「専業主婦はいいよねー、会社の人間関係に悩まされなくって…」とは決して言えません。
【事例】ママ友との距離の置き方がわからない
智絵里さん (34歳 子供1人)
詮索しあうママ友たち
智絵里さんは、夫の転勤で山梨から都内に引っ越しました。その時、子供は3歳。前の家の近くには公園がたくさんあったので、各公園に出かけてママ友がたくさんできました。引っ越してきた家は、幹線道路の近くで、公園は10分歩いたところにひとつのみ。あとは図書館に併設されたキッズスペースがあるだけ。
わんぱくな男の子なので、遊具や砂場で遊びたがります。毎日、公園とキッズスペースで遊ばせるようしました。そこにはママたちのグループがいくつかありましたが、どれに属していいかなどわかるわけもなく、あたりさわりない会話をしていました。
すると晃子さんという3歳の女の子のママに声をかけられ、自宅のお茶会に呼ばれます。そこには5組の親子がいて、家庭の事情を根掘り葉掘り質問され、居心地がよくない。自分の子供がお友達のおもちゃを取ったと言って叱らざるをえないシーンもありました。現場を見ていないのに叱るはめに。晃子ママグループとはなじまず遠ざかるようにしました。
ママ友間の派閥
その後、今度は別のママ、佳代さんに、みんなでサンシャイン水族館に行こうと誘われます。佳代ママはほがらかで、近隣の子育て情報に詳しく、頼りになりました。お互いの家庭のことも赤裸々に話し、親密になります。佳代ママが来年からパートに出ようと考えていること、旦那さんは保険会社勤務ということなど。それからは佳代ママグループに属したことになっていました。
とはいえ、公園が少ないので晃子ママにとも顔を合わせますし、LINEでたわいないやり取りもします。そのうち、佳代ママの悪口が頻繁に入るように。肯定するわけでもなく「そうですか」と曖昧な返事をしていたら、ある日、佳代ママから電話が入ります。「あなた最低ね。こうもりみたい」と怒り口調。晃子ママが、智絵里さんは佳代ママの家庭事情を全部バラしたと言いふらしていたのです。
晃子ママは佳代ママとグループのメンバーの人数争いをしていることがわかってきました。誰もそんなことを教えてくれず、佳代ママの家庭事情を誰が晃子ママに告げたのかもわかりません。誰が味方?誰がスパイ?誰かが自分をおとしいれた?智絵里さんは「母親同士でこんなことで騒ぐなんて馬鹿みたい…」と思いますが、子供の遊び相手は欲しい。
近隣のママ友とは決別して、わざわざバスに乗って隣町の公園に出かけるようになりました。
ママ友トラブルは孤独な闘い
学校のいじめはニュースになりますが、ママ友トラブルは浮き上がってきません。ネットで「ママ友トラブル」と入れると、ずらりと出てきます。ママ友とバチバチ火花をちらしても”夫は動かない”。
ここはポイントです。
女同士のバチバチに介入したくないのが男性心理。ドラマ「砂の塔」でもそういう描き方をしています。一人で解決しなければストレスが続きます。前の時代はネットも掲示板も知恵袋もありませんでした。そして下手に公開相談すると「あなたが悪い」と指摘されるケースもあり、また落ち込むことも。ママ友社会は、気を遣いながら過ごさねばならない場であります。
専業主婦特有の悩み、おわかりいただけたでしょうか。