失敗は成功のもと!失敗から学ぶ、「PDCA」ならぬ「PDSAサイクル」の実施で、精神科スタッフのけがが65%減少
青少年が入院する精神科病棟でしばしば発生するスタッフのけがを減らすために、「PDSAサイクル」の実施が効果的であると分かった。
失敗から学ぶ「PDSAサイクル」
米国シンシナティ子ども病院の研究グループが、労災に関する国際誌ワーク誌で2015年4月2日に報告した。精神科病棟に入院する青少年が、病気の症状のために突発的に危険な行動を取った場合、病院スタッフはそれを止めに入る必要がある。その際、スタッフがけがを負う場合がある。研究グループは、そういったけがを減らす目的で、青少年が入院する精神科病棟のスタッフに対して「PDSAサイクル」を導入、実施した。PDSAサイクルは、「計画(Plan)、実行(Do)、反省・学び(Study)、改善(Act)」のプロセスを繰り返すマネジメント方法。今回、「スタッフと入院中の青少年との関わりの改善」に焦点を絞ってPDSAサイクルを実施した。一般的にビジネス分野で「PDCA」という言葉があり、Cは検証(Check)とされる。ここをスタディーにしている。失敗から学ぶという姿勢で、より危険行動という特殊性を踏まえているところが特徴だろう。
6カ月実施
参加したのは、発達障害と精神病を併発して入院している青少年の治療に、直接携わっている医療スタッフ。PDSAサイクルを続けながら、対象スタッフが業務中に負った全てのけがを毎週集計し、記録してもらった。また、米国労働安全衛生局(OSHA)による「記録すべき傷害」に相当するけがと、けがが発生した間隔についても記録してもらった。PDSAサイクルは、2011年8月から6カ月間実施された。実施前と6カ月後のけがの記録を比較して、スタッフのけがが減らせたかどうかを評価した。
けがが65%減少
PDSAサイクルを6カ月続けた結果、スタッフのけがは、週に2.2件発生していたのが、週に0.77件となっており、65%減っていた。2011年1月から8月までに、労働安全衛生局による「記録すべき傷害」は8件発生しており、発生した間隔は平均26.5日だった。PDSAサイクルを実施後、「記録すべき傷害」の発生間隔は124日に延びていた。PDSAサイクルの実施は、スタッフのけがの発生件数を減らし、発生間隔を空けるために効果的だと分かった。失敗に学び、同じ失敗を繰り返さないように対策を立てるPDSAサイクル。さまざまな業種において、業務の改善に結びついているようだ。
文献情報
Hill AK et al. Measurable results: Reducing staff injuries on a specialty psychiatric unit for patients with developmental disabilities. Work. 2015 Apr 2. [Epub ahead of print]
Work. 2015;51(1):99-111. doi: 10.3233/WOR-152014.