慢性疲労症候群の原因に手掛かり、異常があるのは「サイトカイン」か
原因不明の疲労が続く病気が問題になっている。「筋痛性脳脊髄炎(ME)」や「慢性疲労症候群(CFS)」と呼ばれるような病気だ。その正体が分かってきた。
体を守る仕組みの変化を検証
研究グループによると、筋痛性脳脊髄炎や慢性疲労症候群は、人を無能力化させる、説明のつかない病気だ。米国だけでも400万人の患者がいるとされている。この病気の背景にどのような体の中の変化が起きているのか、病気の診断や管理につながる研究結果の発表は少ない。診断の基準がばらばらになりがちで、病気の問題を考えるときに何を見るかも一定していない傾向がある。研究グループは、この病気を持つ298人と健康な3348人を対象として、体を守る免疫の反応、診断の状況、病気の継続期間、さまざまな診察や検査の結果を検証した。さらに、病気の持続期間に応じて、発症から3年以内という持続期間が短期間の52人、3年を超える長期間の246人に分けて検証した。
病気の初期のみに異常
その結果、病期の持続期間に基づく解析では、病期の初期の人で変化が見られた。炎症が起きたときに細胞から出てくるタンパク質である炎症性サイトカイン、炎症を抑えるタンパク質である抗炎症性サイトカインが増えてくると分かった。サイトカイン同士をコントロールするような仕組みがばらばらになっていた。病気が長期に及ぶ人では見られないものだった。研究グループは、病気が始まったばかりの人で参考にできる可能性があると指摘している。慢性疲労症候群については、米国の国家機関が問題にするほど注目されている。診断名を変更する動きもある(「慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)」、新しい診断基準と名前の提案、米国IOMが発表を参照)。今後、実態がさらに明確になってくると見られる。
文献情報
Hornig M et al.Distinct plasma immune signatures in ME/CFS are present early in the course of illness.Science Advances 27 Feb 2015.