気分の上下が病的に激しい人、その裏に遺伝的な仕組み、「双極性障害」のリスク
双極性障害には遺伝的な原因があるようだ。
うつ病とは異なる双極性障害
米国の研究グループが、精神分野の国際誌であるモルキュラー・サイカイアトリー誌2015年5月号で報告した。双極性障害とは、うつ病も含まれる気分障害と呼ばれる精神的な病気の一つ。気分の上下が異常に大きいのが問題になる。
人間にもマイクロRNAという仕組み
遺伝的な原因とは、マイクロRNAという仕組み。人間にも重要な役割を果たしていると知られている。人間の細胞の中には1000種類以上ものマイクロRNAが存在している(さまざまな生命現象をコントロールする「マイクロRNA」、作られるメカニズムを解明を参照)。RNAは、遺伝情報を保つゲノムDNAと同じ「核酸」の仲間で、いとこのような存在となる。DNAは2重らせん構造をしているのに対して、RNAはヘアピンのように折り返したループの形になっている。マイクロRNAはDNAの遺伝情報に基づくが、一見すると遺伝情報を持っていない。DNAからタンパク質が作られるときに、RNAにいったんコピーされてくるのだが、ここに取り付いて、遺伝子が使われる量を調節する役割を持っている。人間の成長から病気まで、健康に関する体内のさまざまな処理を助けている。
働きが不十分
研究グループは双極性障害につながる要因として、マイクロRNAの働きに注目した。研究グループは、双極性障害だった人が亡くなった後の脳と、双極性障害の人から取った細胞を増やして、マイクロRNAの状態を検証した。結果として、miR-34aが双極性障害だった人の死後の小脳の細胞、双極性障害だった人から取って培養した神経で増加していると確認した。さらにmiR-34aのターゲットになっている遺伝子として、「ANK3」と「CACNB3」という遺伝子が挙げられるとも分かった。
神経ネットワークに影響
さらに、人の神経のもとになる細胞で、miR-34aが増えてくると、神経細胞の分化や、神経細胞が連携するときのタンパク質が作られるのを邪魔されると分かった。神経細胞そのものの発達やネットワークの充実に問題を起こす可能性があるかもしれない。神経の病気の背景も詳しく分かってきている。
文献情報
Bavamian S et al. Dysregulation of miR-34a links neuronal development to genetic risk factors for bipolar disorder. Mol Psychiatry. 2015;20:573-84.
Mol Psychiatry. 2015 May;20(5):573-84. doi: 10.1038/mp.2014.176. Epub 2015 Jan 27. Research Support, N.I.H., Extramural; Research Support, Non-U.S. Gov’t