スポーツ心臓って何?症状や原因、突然死との関係性について知っておきたいこと

はじめに
皆さん、スポーツ心臓と言う言葉を知っていますか?スポーツをしない人には、馴染みのない言葉かもしれません。逆にスポーツを継続してされている方であるならば、一度や二度は耳にしたことがある言葉かもしれません。今回はこのスポーツ心臓は、どんなものなのかについてまとめてみようと思います。
スポーツ心臓とは?
スポーツ心臓の特徴
では、スポーツ心臓とはどんなものなのでしょうか?特徴にをいくつか挙げてみようと思います。
通常よりも大きい心臓
スポーツ心臓とは、長い期間激しい運動をした結果、心臓が通常よりも大きくなるといった現象です。形状は、球体のようにみえるそうです。
この考え方が生まれたのは、1899年のHenschenによる、クロスカントリー選手の心臓拡大を指摘した文献によるものだと言われています。
安静時心拍数が平均より下回る
スポーツ心臓とは、安静時の心拍数が一般的な基準の数値よりも、かなり大きく下回る心拍数を示すような症状を示しているそうです。
1分間の数値は、成人の平均的な数値が60~70回。その範囲を下回るようなケースになるそうです。具体的には、スポーツ選手だと1分間の数値が40~50回。一流マラソン選手だと、30 回位になるようです。
心雑音が見られる場合も
スポーツ心臓は、聴診器で診察した場合に、心雑音がみられる場合もあるそうです。主に見られる心雑音は、収縮期雑音、Ⅲ音(さんおん)、Ⅳ音(よんおん)。
収縮期雑音というのは、心臓が収縮したときに出る雑音で、心臓の音を「ドックン」と表した場合、ドッとクンの間に聞こえる雑音らしいです。
Ⅲ音(さんおん)とは、拡張早期に心房から、血液が心室壁を振動させることで発生する音の雑音。Ⅳ音(よんおん)とは、心房が収縮する時、血液が入ってくるときの音による雑音らしいです。
不整脈がある場合も
スポーツ心臓には、不整脈がある場合もあるそうです。不整脈とは、心拍数や心拍のリズムが一定ではない状態や、脈がとぶなどの現象を言うそうです。
不整脈は、様々な種類があり、自覚症状がない場合もある場合もあるなど人のよる場合が多いそうです。しかし、不整脈は生命の危険を伴っているといっても過言ではないそうです。不整脈によって、突然死になり得る場合もあるそうです。ですが、なんら問題もない場合もあるそうなので、不整脈をお持ちの場合は、医師に相談するのがいいかと思われます。
持久性のスポーツ選手に多く見られる
スポーツ心臓は、持久力を必要とする運動種目などの方に多く見られるようです。特にマラソンなどの長距離走、自転車やクロスカントリースキーの選手などに多く見られるようです。しかし、それらの選手の人すべてにみられる症状というわけではありません。
心臓の状態としては、心臓の拡大が起こるとされているようです。
筋力トレーニングをしている選手にも
スポーツ心臓は、重量上げ、柔道などの筋力トレーニングを主に行っている人にも見られます。筋力トレーニングを行っているスポーツ選手は、運動をしているときに血圧が上がり、心臓が血圧を押し出し、抵抗が増します。それによって、心臓の筋肉自体が強く分厚くなると言われています。
こちらの場合は、心臓の状態は、心臓筋肉の肥大が起こるとされているようです。
病気ではなく、治療の必要はないけど・・・
このスポーツ心臓は、病的なものではなく、強度のトレーニングに対する適応症状と考えられています。
さらには、治療の必要は特にない場合が多いようです。スポーツ心臓は、スポーツのトレーニングを中止すれば、1~3年以内に症状が消滅すると言われているからです。
ただ、後から述べますが、スポーツ心臓は他の心臓病との識別が難しい場合があるようです。ですので、心配な方は一度循環器科などを受診して、検査することも必要かもしれません。
スポーツ心臓の原因
なぜ起こるの?
では、なぜスポーツ心臓になるのでしょうか?スポーツ心臓の原因についてまとめてみようと思います。
激しい運動に適応したため
スポーツ心臓は、激しい運動に適応して心臓が大きくなったことをいいます。心臓が肥大したことによって、いちどに送れる血液量が増大して疲れにくくなります。そうすると心拍数が平均より低くなったとしても、大丈夫のようです。
副交感神経が優位に
スポーツ心臓になる場合は、心臓の働きをおさえる自律神経である迷走神経が緊張するらしいです。それらの働きにより、副交感神経が優位になり、脈が遅くなるといったことがおこるとされているようです。
スポーツ心臓の症状(胸部X線検査)
胸部X線検査でわかるの?
スポーツ心臓は、胸部X線検査で見つけることができるのでしょうか?
大きさを確認する
スポーツ心臓は、通常の心臓と比べて拡大や肥大がみられます。胸部X線検査で見てみると、やはり通常より大きく、さらには丸みのある球状の場合が多いようです。まずは胸部X線検査で、通常より大きいと診断された場合、その後スポーツ歴の有無を確認されたり、他の検査を要する場合もあるようです。
さらには、心臓の大きさを測る時、骨格と心臓の右端から左端までの長さを測定して比率を出すそうです。これを心胸郭比(しんきょうかくひ)というらしいです。その比率が、50%以上になると、心肥大という病気を疑うそうです。
心肥大とは、心臓の筋肉が肥大し、心筋重量の増加した状態のことを言うそうです。ひどくなると、動機や息切れなどを引き起こす場合があるそうです。スポーツ心臓は、その心肥大と間違われることもあるようです。
レントゲンだけでは、心肥大とスポーツ心臓の区別はつかないそうなので、その他に心電図などでの検査も必要になってくるようです。
スポーツ心臓の症状(心電図検査)
心電図検査にはどういった影響が?
では、スポーツ心臓は、心電図検査にはどういった影響が出るのでしょうか?まとめてみようと思います。
心電図の見方
では、心電図はどういう風に見ればいいのでしょうか?簡単にまとめてみようと思います。
P波とは、小さなドーム状の波。R波とは、背が高くとがった波。T波とは、P波より大きめのドーム状の波になります。心電図は、この3つの波の繰り返しによって成り立っています。
さらには、R波の前には下向きのQ波、R波の後にはS波があり、これらを合わせてQRS波というそうです。
そして、P波は洞結節にスイッチが入るときに現れ、QRS波は、心室に電気が流れて心臓が収縮する時に現れます。T波は、心臓が弛緩すときに現れるそうです。
P波の始まりからQ波の始まりまでをPQ時間といい、これは、電流が心房から房室結節に流れることを表しているようです。
QT延長症候群
QT延長症候群とは、心臓の興奮が延長している状態らしいです。QTが延長すると、重い不整脈が起こりやすくなるそうです。
スポーツ心臓で、QT延長症候群と心電図で診断される場合もあるようですが、スポーツ心臓が原因というよりは、スポーツ心臓と見分けがつきにくい心臓病が隠れていて、この症候群が出る場合があるようです。
QT延長症候群は、不整脈などの治療薬や電解質の異常、徐脈などで起こりやすいとされているようです。
ST上昇
ST上昇とは、心筋梗塞の発作時や心膜炎の時に現れる心電図の波形らしいです。現れたときは、これらの病気を疑ったほうがいいようです。しかし、心臓に病気がなくてもこの現象が起こることもあるそうです。
スポーツ心臓と診断されて、このST上昇が現れた場合も、スポーツ心臓というよりは、他の心臓の病気が疑われる場合もあるので、きちんと精密検査などを受けるようにしたほうがよさそうです。
徐脈
スポーツ心臓は、心電図において異常が見られる場合があります。それは徐脈と言うものです。
徐脈と言うのは不整脈の一種で洞性徐脈、徐脈性不整脈とも言われています。成人の安静時の心拍数と言うのは、一般的に大体毎分60~75回ですが、60回未満の人のことを徐脈というそうです。
この徐脈が、心電図で見られる場合もあるようです。
房室ブロック
スポーツ心臓の人は、心電図で異常が見られることがあります。房室ブロックもその中の一つです。房室ブロックとは、心臓の刺激を伝える機能に問題があり、その刺激が伝わらなかったり、伝わるのが遅いといったものらしいです。そうった障害により、徐脈が起こるものらしいです。
軽度から重度に3つに分かれており、第1度房室ブロック、第2度房室ブロック、第3度房室ブロックと言うそうです。
危険のサインとしては、動悸、失神発作、脈拍不整や心電図でPQ間の異常などがあげられるそうです。夜間の発作を起こしやすいそうです。
右脚ブロック
スポーツ心臓にみられる、心電図異常としてあげられるのが、右脚ブロック。これは、心臓の中に電気信号が流れるとき、右心室への電気信号を伝える電流の流れが悪い状態を言うようです。
右脚ブロックは、左脚ブロックに比べて問題がないことも多く、他に心機能異常がない場合なら予後もいいそうです。
左室高電位
スポーツ心臓に見られる心臓異常として挙げられるのが、左室高電位と言われるものらしいです。
左胸の心電図波形の上向きのR波が通常より高かったり、下向きのS波が低い場合を言うそうです。左室肥大出現れることもあるようですが、問題のない場合も多いようです。
スポーツ心臓のメリットとデメリット
良いことと悪いこと
では、スポーツ心臓の良い面と悪い面についてまとめてみようと思います。
メリット
スポーツ心臓のメリットとして挙げられる事は、1回の呼吸で酸素を扱う量が増えるという点です。心臓が鍛えられることにより、体に送り込まれる血液量が増えます。酸素と言うのは血液によって心臓に運ばれます。
そのため血液量が増えるという事は、酸素の供給量も増えることになるのです。
そうなれば、スポーツをするのに優位になるらしいということが、メリットとして挙げられます。
デメリット
では、デメリットは何でしょうか?これは、運動の後に急激に血圧が上昇を起こす可能性があるということです。気をつけなければならない点でもあります。
あとは、過度な激しいトレーニングでは、心臓の筋肉に負担を与える可能性も考えられます。ですので、過度のトレーニングは有害であるかもしれないといった考え方をする方もいらっしゃるようです。
他には、このスポーツ心臓は、スポーツをしている中での突然死などの原因とされる、心臓病との区別がつきづらいというデメリットもあります。
スポーツ心臓と突然死の関係性
スポーツ心臓が原因なの?
スポーツをしている人の中には、寿命が短かったり、突然死してしまう方がいらっしゃいます。もしかして、スポーツ心臓が原因なのかな?と不安になる方もいらっしゃるかもしれませんので、スポーツ心臓と突然死の関係性についてまとめてみようと思います。
突然死の原因ではないとの見方がある
スポーツ心臓とは、激しい運動をすることにより、それに順応するために心臓の筋肉が肥大する現象です。それ自体は、自然な現象ですし、突然死を招くと言われている高血圧や心筋症による肥大とは異なると考えられているようです。
つまり、スポーツ心臓そのものが突然死の原因ではないという見方があるようです。
では、なぜ?
では、どうしてスポーツ選手の人が突然死をすることがあるのでしょうか?それは、もともと心臓に疾患があり、それに気づいていなかっただけで、スポーツが間接的な原因となって突然死を招いたと考えられるらしいのです。
違う病気が隠されている?
スポーツ心臓は、脈拍が遅くなる徐脈になる方もいらっしゃると前述しました。その徐脈、つまりは脈拍数が遅い方の中には、スポーツ心臓ではなく、心臓の病気の場合があるようです。
それが、「肥大型心筋症」という病気らしいのです。
肥大型心筋症とは?
スポーツ心臓は、スポーツによって心臓の筋肉が肥大するものに対して、この肥大型心筋症は、主に高血圧が原因となり、心臓が通常より大きくなった状態を言うようです。遺伝子の異常が原因とされているようです。胸部エックス線検査を行ったときに、見つかることが多いそうです。
この肥大型心筋症が、突然死の原因になるらしいのです。
スポーツ心臓と肥大型心筋症の見極め方
スポーツ心臓と肥大型心筋症は、見極め方がとても難しいそうです。ですので、本当は肥大型心筋症なのに、スポーツをしていたりすることから、誤ってスポーツ心臓と診断されることもあるようです。では、どうやって区別すればいいのでしょうか?
それには、心エコーという検査が必要となってくるそうです。心エコーとは、心臓超音波検査のこと。この検査は、人の耳では聞こえないくらいの超音波を心臓に発信して、かえってくるエコーを受診して、心臓の様子を画像に映し出す検査とのことです。
この検査で何を調べるのかというと、心臓の硬さを調べるそうです。そのことを、拡張能障害というそうです。
スポーツ心臓の心肥大は、柔らかい筋肉であり、肥大型心筋症の筋肉は、硬い筋肉だそうです。筋肉の硬さによって、スポーツ心臓か肥大型心筋症化を見分けるそうです。
他に疑われる病気
肥大型心筋症の他にも、スポーツ心臓と診断されたのに他の病気が隠されている場合もあります。虚血性心疾患、洞不全症候群、不整脈原性右室心筋症などが挙げられます。
虚血性心疾患とは、心臓に血液を送る冠動脈が詰まる疾患で、心筋梗塞や狭心症などがあげられます。
洞不全症候群とは、心臓の収縮の命令を出している洞房結節の細胞に異常が起こり、徐脈を引き起こす病気らしいです。
不整脈原性右室心筋症とは、右心筋の繊維が脂肪変性することによるもので、心臓の右の全て、もしくは一部に機能障害や異常が見られるものらしいです。動悸やめまいなどの症状もあるようです。
これらの病気は、突然死の原因とも言われているものです。
心配な方は循環器受診を
もしスポーツ心臓と診断された方で、肥大型心筋症や他の病気が心配な方は、循環器科を受診してみるのもいいかもしれません。そして一度、心エコーやホルター心電図などの心臓の検査をしてみれば、安心できるかもしれませんよ。
スポーツ心臓についてのまとめ
いかがでしたか?スポーツ心臓とは、心臓が運動をすることによって大きくなることを言うようです。そして症状としては、主に徐脈が見られるようです。心電図異常なども現れることもありますが、どちらかというと、スポーツ心臓によるものではなく、他の心臓病が隠れている場合があるようです。
肥大型心筋症などの、突然死の原因となる病気との識別も難しいようです。ですので、スポーツ心臓と診断されて、不安な所見が出た場合は、一度循環器科を受診して、精密検査を受けたほうが安心かもしれません。
スポーツをすることは、とてもいいことだと思われます。ですので、スポーツ心臓と診断されても、安心してスポーツができるように検査をすることも大事ですね。
どうか、あなたが健やかな毎日を送れますように。