LSDなど幻覚誘発薬に規制緩和を求める動き、有力医学誌で「有害性は低い」の意見

LSDなどの幻覚誘発薬について規制緩和を求める動きが出ている。言われているよりもはるかに有害ではなく、医療向けの使用についてさらに研究できるようにすべきだという主張だ。法的な分類を改めるべきとこのたび有力医学誌で英国の研究グループが意見を表明している。
最近になって治療効果の報告
英国キングス・カレッジ・ロンドン精神医学心理学神経科学研究所の精神科医が、有力医学誌のBMJ誌2015年5月号で報告した。研究グループによると、LSDやシロシビン(またはサイロシビン。「マジックマッシュルーム」と呼ばれるシビレダケ類の成分)は、英国では最も危険な物質に法律で分類され、医療目的でも試験がほとんどできない状態になっている。1967年に「スケジュール1クラスA」と呼ばれ使用が禁止された。「もともと幻覚誘発薬は臨床精神医学で広く使用されたり、研究されたりしていた。1950〜60年代に発表されたさまざまな試験の報告では、精神障害への利益も示されていた」と説明する。研究グループは、スケジュール2に分類されているヘロインやコカインよりも法的規制が厳しいものの、幻覚誘発薬が習慣性であるという証拠はなく、管理された状況で使ったときに有害だという証拠もほとんどないという。最近でも、人への効果が報告されているのは重要だ。進行したがんや強迫性障害、たばこやアルコールの依存症、群発性頭痛に関連した不安症状で利用可能性が出ている(「危険ドラッグで精神異常」はまれ?ネイチャー誌が賛否両論に注目を参照)。
現在は高額で利用困難
現在、試験目的でシロシビンを生産しているメーカーは世界中に1社のみ。1g(50回分)10万ポンド、日本円で1900万円近くという途方もない費用がかかる。大人数を対象とした臨床試験はほぼ不可能な状況になっている。さらに、英国ではスケジュール1の薬物を保有するにはおよそ5000ポンド、日本円で100万円ほどの費用のかかる免許を必要とするため、4カ所の病院しか保有していないという。さらに、定期的な検査に加えて保管と輸送には厳しい規則がある。幻覚誘発薬の臨床研究には、ヘロインのような規制が緩い薬物の研究の5〜10倍の費用がかかり、研究資金も受けにくくなっている。幻覚誘発薬は他の規制物質より有害でも常習性でもないことから、英国の薬物乱用諮問委員会と2016年度国連麻薬特別総会に対して、治療目的の可能性を探るための研究ができるように、スケジュール2に分類し直すことを求めるという。幻覚誘発薬は、LSDやマジックマッシュルームのようなよく知られたものから、危険ドラッグと呼ばれるようなより知名度の低いような薬剤もある。医療目的の利用について可能性を求める動きは続く(危険ドラッグが最新鋭うつ薬に?米国グループ「その発想はなかったが、ブレークスルーに」を参照)。海外の動きが日本で影響を及ぼす可能性もありそうだ。
文献情報
Psychedelic drugs should be legally reclassified as they may benefit patients
Rucker JJ. Psychedelic drugs should be legally reclassified so that researchers can investigate their therapeutic potential. BMJ. 2015 May;350:h2902.
BMJ. 2015 May 26;350:h2902. doi: 10.1136/bmj.h2902.