腰痛に精神ストレスへの治療が効果、「認知行動療法」を応用
腰痛の治療方法として、新たな形のカウンセリングをベースとした治療「認知行動療法」が効果を発揮する可能性があるようだ。慢性腰痛に加えて精神的ストレスにも苦しんでいる人に確実な方法と見られている。英国のロンドン大学を中心とした研究グループが、整形外科系の専門誌であるBMCマスキュロスケレタル・ディゾーダーズ誌で2015年6月16日に報告した。
日本でも最も多い症状
英国では腰痛は最も多く、医療費も多くかかる健康面の問題と研究グループは説明する。日本でも、厚生労働省の国民生活基礎調査で日本人が最も悩まされている体の症状と分かっている。この症状をコントロールするときには、体そのものだけではなく、心の問題も大きいと分かってきている(腰痛のリスク要因を特定、「ニコチン依存」と「肥満」などに要注意)。
痛みを受け入れていく
「状況的認知行動療法(CCBT)」という新たな治療法の効果を、このたび研究グループは検証している。治癒不可能な痛みを受容しながら、痛みと共にありながら充実した生活を送れるよう、カウンセリングを通じて学んでいくという内容。研究グループはこの状況的認知行動療法が実施可能と見なせるか、体の動きの改善を目指す理学療法と比べた。腰痛に悩む人を対象として、8週間にわたって状況的認知行動療法のグループまたは理学療法のグループのいずれかに分かれてもらう。状況的認知行動療法については、訓練を受けた心理学専門医が1対1で行った。
「理学療法と一緒」で最良か
その結果、状況的認知行動療法を受けた人は、治療を受け入れられるという意見を出しており、研究グループが興味深いと指摘していたのは、治療を受けた方も治療を手掛けた方もいずれもが理学療法と新しい治療を組み合わせるのが最良の治療法と考えていたところ。研究グループの一人は「一部の腰痛に悩む人にとっては心理的ストレスが大きな要因となっている。効果的な治療法を見つけだすことは大きな課題。理学療法とこのような心理学的アプローチの組合せは症状をより効果的に治療する良い方法になる」と述べる。
精神ストレスへの対応も選択肢に
腰痛の要因としては、ニコチン依存、肥満、うつ、アルコール依存が重要なリスク要因と指摘されている(腰痛のリスク要因を特定、「ニコチン依存」と「肥満」などに要注意)。腰痛を減らして、そのための対策の費用を抑えたり、将来的な障害も減らしたりするのは大きな課題。日本でも、腰痛のためにさまざまな癒しの手段を求める人は多い。その中には精神ストレスを解決する方法も入ってよいのかもしれない。
文献情報
Talking therapy shows promise for people with chronic low back pain
Royal Holloway | Talking therapy shows promise for people with chronic low back pain | About us home
Pincus T et al.Delivering an Optimised Behavioural Intervention (OBI) to people with low back pain with high psychological risk; results and lessons learnt from a feasibility randomised controlled trial of Contextual Cognitive Behavioural Therapy (CCBT) vs. Physiotherapy. BMC Musculoskelet Disord. 2015;16:147.
BMC Musculoskelet Disord. 2015 Jun 16;16:147. doi: 10.1186/s12891-015-0594-2. Research Support, Non-U.S. Gov’t