抗がん剤に「迅速承認」の動き、悪性黒色腫のための免疫療法薬ペンブロリズマブ、英国
悪性黒色腫は皮膚にできるがんで、生存率が低いと知られている。体のがんへの攻撃力を高める効果を持つ「ペンブロリズマブ」がこの3月に英国の「迅速承認」の仕組みにより通常よりも早いタイミングで使えるようになった。日本でも有望な薬になりそうだ。
通常数年のプロセスをスキップ
英国がん研究所の研究グループが2015年3月11日に報告している。ペンブロリズマブは、「抗体」と呼ばれる異物に対抗する免疫の仕組みを人工的に生かした薬だ。商品名はキートルーダ(Keytruda)と呼ばれる薬で、英国で重篤ながんにかかった人が未承認薬をより迅速に利用できるようにする「医薬品早期アクセス制度(EAMS)」の下で承認された最初の薬剤である。英国の医師は通常プロセスに数年かかる欧州での承認手順が終了する前にこの薬剤を処方できるようになっている。進行した悪性黒色腫では第1選択として使われる。
がんをフル攻撃
がん細胞が、自分を攻撃させないためのメッセージを送っている。異物に対抗する免疫細胞がこのメッセージを誤解して、がん細胞を正常な体の細胞と勘違いするという現象が起きている。ペンブロリズマブはこのがん細胞のメッセージを受け取る場所である「PD-1」と呼ばれる免疫細胞の表面の分子にロックオン。メッセージの伝達をさまたげて、免疫細胞ががんに攻撃できるように変える。血液のがんの分野でニボルマブという薬が登場している。同様にがんにフル攻撃できるよう調節する薬となる(がんを「フル攻撃」させる薬剤、悪性リンパ腫で効果、有力医学誌で報告を参照)がんの人には朗報。今、PD-1をターゲットにした薬は増えつつあり、同様な動きも増えてくるかもしれない。
文献情報
Greenwood E et al. New immunotherapy drug ‘fast-tracked’ for melanoma patients. Cancer Research UK. 2015 Mar 11.
New immunotherapy drug ‘fast-tracked’ for melanoma patients | Cancer Research UK
A new immunotherapy drug has become the first treatment ‘fast-tracked’ for NHS patients with advanced melanoma.