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薬よりも糞便移植、1700年前に「黄色いスープ」と呼ばれた治療は現代に蘇る

腸内フローラや糞便移植などと病気の関係が注目されている。もともと糞便移植によって「クロストリジウム・ディフィシル感染症」という病気を克服できるという治療が注目されていた。何度も医学誌で報告されて、その価値は強調しても強調し過ぎないレベルにまで「当たり前の治療」として定着してきているようだ。日本でもこの波は早晩やってきそうだ。

厄介な感染症

排泄物中の微生物の移植、つまり糞便移植で、66歳の男性のクロストリジウム・ディフィシル感染症が治ったという研究報告があらためて出ている。消化管の中では、薬がほとんど効かない多剤耐性菌を排除することにも成功した。米国の研究グループが、微生物分野の専門誌ジャーナル・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー誌4月号で報告しているものだ。糞便移植は日本ではまだ「きわもの治療」くらいにしか受け取られていないかもしれないが、こうした報告を見ると、米国の医療現場では当たり前のように定着しつつあるようにも見える。そもそもクロストリジウム・ディフィシルは大腸に炎症を起こし、下痢を来す病気である。入院中の高齢者がかかりやすい。この感染症が厄介なのは、抗菌薬を使って治療した後に、この菌だけが生き残るというものだ。抗菌薬を投与すると、クロストリジウム・ディフィシルは胃腸の中で「胞子」と呼ばれる状態で薬の影響を耐えしのぐことができる。薬が効きにくいカプセルのようなものだ。胞子は発芽して、再び細菌は活発になる。毒素を生み出す出し続ける悪化の連鎖が起こる。米国疾病対策センター(CDC)によると、米国全体での推定発症件数は45万3000人。発症率は女性(1.26倍)、白人(1.72倍)、65歳以上の高齢者(8.65倍)という条件に当てはまると高いと分かった。推定死亡者数は2万9300人となっていた。65.8%は医療施設関連での感染だった(糞便移植で注目されるクロストリジウム・ディフィシル感染、米国で3万人が死亡を参照)。

「頼みの綱」

今回、研究グループが報告した66歳の男性はもともと重症の状態となっている人で、手足の麻痺を起こしていた。集中治療室に入院してから1週間目にクロストリジウム・ディフィシル感染症による大腸炎と診断された。抗菌薬で治療して軽くなっても、抗菌薬を減らすと必ずぶり返した。さらに薬の効きにくい多剤耐性菌が分離された。従来本人の状態の悪さもあって、お手上げ状態と言えるかもしれない。今や頼みの綱は、糞便移植となっている。男性に対しては姉妹がドナーとなって糞便を提供。移植から数カ月の時点ではまだ尿に入れたカテーテルに薬剤耐性菌として有名なメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)が確認できたものの、集中治療室の入院中にこのほかの多剤耐性菌は確認されなくなった。正常な腸内フローラの消化管への補充によって多剤耐性菌が消えた。

洗練されて帰ってきた

長期にわたって入院している人の多くは、抗菌薬の投与を受けて、多剤耐性菌が体内で繁殖するようになる。糞便移植は、健康なドナーから取った排泄物の微生物を使う。90%の確率で治療効果を示して、抗菌薬による治療より効果的である。糞便移植で正常な腸内細菌を補充し、抗菌薬から遠ざけて、多剤耐性菌が体から消え、命を救えるという。研究グループによると、驚くことにこの治療は1700年前に取り組まれたようだ。1700年前に「黄色いスープ」として腸炎に使われた記録があるという。1950年代から偽膜性大腸炎に散発的に使われてきた。洗練させて糞便移植は帰ってくる。

文献情報

FECAL MICROBIOTA TRANSPLANT CURES C. DIFF, BLOCKS MULTI-DRUG RESISTANT PATHOGENS

Washington, D.C. – May 6, 2015 – A fecal microbiota transplant (FMT) not only cured a case of Clostridium difficile (C. diff) infection in a 66 year old man; it eliminated populations of multi-drug resistant organisms both in the patient’s gastrointestinal tract, and at several other body sites. This case report is published ahead of print April 15 in the Journal of Clinical Microbiology, a publication of the American Society for Microbiology.

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