クリスパー(CRISPR)技術の利用に警鐘、サイエンス誌

DNAを切断、接合する革命的な新技術。クリスパー・キャス9(CRISPR-Cas9)という技術が注目されている(ノーベル賞が来年でもおかしくはない、「クリスパー・キャス」の進化を参照)。人の遺伝子疾患の治療に用いる際には慎重に利用すべきか議論を呼んでいる。米国カリフォルニア大学バークレー校を中心とした研究グループが、有力科学誌サイエンス誌で2015年3月20日に報告した。
生殖系細胞での組換えは中止を!
最近になってCRISPR-Cas9として知られるシンプル、安価かつ極めて効果的にゲノムを変えられるところが注目されている。工学的手法の急速な進歩とCRISPR-Cas9システムの簡便さもあって、分子生物学の知識を持つ研究者ならだれでもゲノムを改変することが可能となってきた。このような状況を受けて、研究グループはDNAを切断、接合する革命的な新技術は人の遺伝子疾患の治療に用いる際には慎重に利用すべきであるとして警告している。さらに子孫にまで遺伝する可能性のあるヒトの生殖系列細胞の遺伝子に対して、変更の試みを止めるよう強く求めている。
公開での議論を!
研究グループは、ゲノム工学技術に関する情報の公開とこの技術を適用すべき分野を限定すべきだと主張している。さらにゲノム工学分野の進歩の速度を考慮して、科学者、臨床医、社会科学者、一般市民、公共団体、利益団体など広範囲にわたる人々が、ゲノム改変の便益とリスクについて緊急に公開討論を行う必要があるとしている。Medエッジでは、この背景について、「西川伸一 THE CLUB」の中でも伝えたい。
文献情報
Doudna J et al. Scientists urge caution in using new CRISPR technology to treat human genetic disease. Science. 2015 Mar 19.
Jennifer Doudna and five other UC Berkeley scientists co-authored a commentary in the journal Science this week urging caution when using new precision DNA scissors to do gene therapy, and strongly…